生徒達に混じってK君がいた。
両手をジャージのポケットに突っ込んだまま、時折、周囲の友だちの動きには笑顔を見せるものの、子どもたちとは、相変わらず微妙な距離を保ち続けていた。かといって、その表情は幼稚園というこの環境を嫌がっていると言う訳でもなさそうだった。

「だって、こんな小さな子どもたちと、どう接したらいいか、わかんないじゃん?」
「幼稚園なんて、初めてだし・・・・!」「それに、俺、一人っ子じゃん!」
本当にそう思ったかどうか定かではないけれど、そんな内面の葛藤が透けて見えるようだった。
少しシャイで、周囲になじむまでに、他人より少しだけ時間を必要とする性分と見えて、両手をポケットに突っ込み続けることで、内面のゆらぎを押さえようとしているかのようだった。

ややあって、小さな年少の子どもたちが手押し車を押して通りかかる。
「何かがいるの、これ、な〜に?」子どもたちの突然の問いかけに、K君の右手がポケットから抜かれる。

もちろん、もう片方の手が抜かれるのにも、そう時間はかからなかったように思う。

「初めの一歩」を踏み出すには、何事にも小さな勇気とエネルギーが要る。
子どもから大人への階段を駆け足で登り始めた多感な時期にある彼らにとっては、それは周囲が感じる以上に「重さを感じる一歩」だったのかもしれない。

小さな子どもたちとのたった一日だけの交流は、中学生たちのこころに何を残してくれただろうか?

昼食の時間に女の子に向けたK君の、朴訥(ぼくとつ)としてはいるものの、朝とは違った柔和な笑顔をファインダー越しに見ながら、そんな思いを巡らせていた。

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